冬鳥たち 秋の舳倉島(3)
事あるごとに読み返す野鳥解説書であるが、おかげで数え切れないほど多くの未見の野鳥がいることを知る。こんな鳥もいるのかと興味が湧き、いつか見たいものだと思う。そんな珍し系の鳥が数多く見られる探鳥地と言えば舳倉島に勝るところはない。今回で4回目の訪問となった。けれども、この島では、未見の鳥たちに出会っても、解説書で覚えたつもりのイメージが即座に役立つわけでもなく、はて、これはなんだったろうかと途方に暮れることが多い。知識が不十分極まりないのは承知だが、己の野鳥識別の不確かさを具体的に思い知らされる。
未見の鳥ばかりではない。普段見慣れた野鳥でも、幼若成の各ステージや雌雄の違い等を見慣れ、更にいろいろな外界条件下での観察経験がなければ、現場で迷うのは当然だとも教わってきた。舳倉島は、それ故に、充分な知識を持ってから訪れるのがよいと聞いたこともある。確かにそうかもしれない。しかし、それはなかなか難しい。自分自身に限って言えば、数歩下がって、最低限の知識だけは持ち合わせておくべきだ、と思うことにしている。最低限とはどの程度かと難詰されそうだが、それは自分自身が決めればよいと思っている。舳倉島は、己の知識の不十分さを自覚させるし、謙虚な気持と同時に、もっと知りたい気持ちにもさせてくれるからである。だから、舳倉島は多くの人を魅了して止まないのではと思う。
分からなければ相談に乗ってくれる先達がいるので、私の場合などは幸いだと常々思っている。今回の舳倉島でも、種の見当がつかない鳥たちがいた。代表的なのは、キアオジだった。実は、それ以外にも先達の眼力を煩わせた鳥がいた。
上の映像は、島の西側にある通称タヒバリ海岸で撮ったものである。当初は、単なるタヒバリと思って撮ったが、画像整理の段階になって、背羽、翼羽の羽縁が際立って白いのが気になった。先達に識別をお願いしたが、撮った方向が限られていて資料不足だったようだ。確とした判断でないと済ませない先達らしく、更に野鳥関係の大御所にまで問い合わせて頂くことになった。その結果、ムネアカタヒバリ冬羽と分かった。夏羽ならともかく、冬羽のムネアカタヒバリなどは、私なんぞが分別するには尚遠い境地である。有難いことだと思った。
上のタヒバリに似た鳥を見た時には、正直胸が高鳴った。
宿の前の草叢で、ホオジロの群が飛立った。港と反対方向の廃屋に向かったので後を追った。もしかしたら、その群れの中にシラガホオジロがいるかもしれないと思ったからである。廃屋の周囲は、砂利置き場であったり、廃棄物が置きっぱなしになって、人影は無かった。そのせいか鳥の数は多く、タヒバリ、カシラダカ、ホオジロが群れていた。自転車の荷籠のような物が捨てられてあって、その縁に見慣れない鳥が止まっていた。全体に濃褐色で、背羽に2ケの大小の白斑を認める。全体の色合も、白斑模様も見たことが無かった。なにやら超珍し系の鳥に遭遇したかと思った。
先達に判別してもらうのが楽しみだったが、返事は簡単だった。タヒバリの部分白化だという。がっかりしたが、よく見れば顔立ちはタヒバリである。考えれば、私にとっては珍し系であることには間違いがない。
上の上段映像も、眺めている間に鳥の種が分からなくなったものである。コホオアカをファインダーで追いかけている最中に偶然撮った。コホオアカだろうと高を括っていたが、後で確かめると胸に縦斑をみない。おまけに、白い眉斑を見てはコホオアカとも思い難くなった。頬が赤いのでホオアカかとも思ったが、上胸部に黒い縦斑を見ないし、白い眉斑も気になる。更に雨覆の白い辺縁も気になってきた。こうなると疑心暗鬼となるが、だからといって、どんな種であるかは見当つかなかった。先達によれば、これもホオジロとのことで、わき腹が濃い茶色で、しかも斑点のないホオジロの仲間は、ホオジロしかいないというのが識別ポイントだ、とのことだった。
更に追加の下段映像もホオジロだった。漁港岸壁で休んでいる一羽が、ホオジロにしては白っぽく明るい感じがしたので撮った。画像整理の段階で、白い眉斑は顕著であるが、ホオジロの最大特徴である白い頬斑がない。胸から腹部にかけても淡色で模様がない。しかし、全体の印象はホオジロと思われたので、幼鳥ではなかろうかと思った。これも念のため先達の目を煩わせたが、大陸系のホオジロであろうとのことだった。
ホオジロ類というのは裾野の広い鳥なのだろう。経験しながら分かることだと思う。
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